OPIE25にて「光コムが拓く次世代コンピューティングと信号処理のフロンティア」セミナーを開催します

2025年4月23日(水)から25日(金)までパシフィコ横浜で行われる OPIE’25 において、「光コムが拓く次世代コンピューティングと信号処理のフロンティア」セミナーを本会主催で開催します。

光周波数コム(光コム)は、光学や計測技術の進展に大きく寄与してきましたが、近年では光コンピューティングや信号処理分野への応用が注目を集めています。本セミナーでは、光コムの活用を念頭に、集積波長光源を活用している最先端の研究と技術開発について、国内を代表する研究者たちによる講演を通じ、その可能性を探ります。具体的には、光テンソル計算器や集積型リザバーコンピューティング、シリコン光回路による深層学習プロセッサ、光信号処理とTHz無線通信の統合、さらに光多重化技術の革新など、多様なテーマを網羅します。また、光コムを活用したより実用的な信号処理技術や、次世代のフォトニクスデバイス開発の最新動向についても議論を深めます。本セミナーは、光コム技術が新たに切り開く研究領域の可能性を探求し、産学連携の新たな展開を模索する場となることを目指しています。光コムと光コンピューティングの未来を共に考える機会に、ぜひご参加ください。参加申し込みは

https://www.optronics.co.jp/ex-seminar/projects/semi/72/6015#seminar_id_1359

にて受付中です。

場所: パシフィコ横浜アネックスホール F206

日時: 2025年4月24日(木) 午後1時30分から

講師と講演概要:

1. 産業技術総合研究所プラットフォームフォトニクス研究センター
 上級主任研究員 叢 光偉

近年、人工知能(AI)システムの大規模化が進む中、大きなエネルギー消費の課題にも直面している。AIの大規模化に伴い必要とされる計算能力は指数関数的に増大し、半年ごとに倍増する一方で、ムーアの法則が限界に近づき、デジタルプロセッサの性能向上は停滞が見られる。従来のデジタルプロセッサは性能の限界に達しつつあり、AIシステムの計算能力への需要が増大し続ける中、新しい計算プラットフォームの探求が急務となっている。こうした背景のもと、光ニューラルネットワークを含む光演算システムは、高速かつ低消費電力での演算を実現する技術として再び注目されている。近年、新たな光ニューラルネットワークのコンセプトが世界中で提案・実証され、活発に進められている。本講演では、光ニューラルネットワークの実現手法、最新の進展、および残る課題について概説し、それらの課題を克服するための最新の研究動向を紹介する。本講演を通じて、光ニューラルネットワークの将来展望と、今後の研究開発における挑戦について議論できればと考えている。

2. 徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所 准教授 久世 直也

マイクロコムは小型で量産性に優れた光周波数コムとして注目されている。また、コムモード間隔が100 GHz以上にすることが容易であり波長多重光源としてコヒーレント光通信やLiDARに応用されている。近年、同様の考えで、光コンピューティングにおいても波長多重性を活かしてマイクロコムを使った並列化の研究が進められている。講演では、マイクロコムの中でも非モード同期状態であるカオスコムを使った多腕バンディット問題に関する研究と、モード同期状態であるソリトンコムを使った光リザバーコンピューティングの研究について紹介する。

3. 慶應義塾大学 理工学部電気情報工学科 教授 田邉 孝純

光周波数コムとは、光周波数軸上に等間隔で周波数成分が並ぶ光であり、従来は固体レーザやファイバレーザなどを用いて実現されてきました。近年、チップ上に実装可能な集積型光周波数コム(マイクロコム)の開発が活発化しています。これは超小型の単一素子でありながら、広帯域にわたる多波長光を一括して生成できる点に大きな特徴があります。多波長光源を用いることで、光信号処理において波長多重技術による並列処理が可能となり、大規模AI計算に伴う電力消費増大という課題に対して、光によるテンソル演算を活用することで消費電力の劇的低減が期待されます。つまり、波長多重技術を用いれば、行列の各成分を独立に計算することができるので、多波長光源としてマイクロコムが適していると考えられています。さらに、高密度集積や高効率な光電変換を実現する上でも、マイクロコムの持つ小型性や安定性が有利に働くことが期待できます。本講演では、マイクロコムの基礎原理から光信号処理への応用までを概観し、将来的な展望を概説します。

4. 東京大学大学院 工学系研究科電気系工学専攻 教授 竹中 充

プログラミング可能なシリコン光回路を用いた光演算は、低消費電力で積和演算を実行できることから、生成AIの消費電力を大幅に削減可能な技術として注目を集めている。我々は、異種材料を集積したシリコン光回路を用いた光演算用デバイスや回路の研究を進めている。これまでに、化合物半導体薄膜や相変化材料、強誘電体をシリコン光導波路に集積した高効率・不揮発性光位相シフタや光パワーモニタ、低消費電力光電変換素子の実証に成功してきた。また、リング共振器をクロスバーアレイ状に配置した独自の演算用光回路の実証にも成功している。光信号の入力方向を切り替えることで、推論に加えて光誤差逆伝播による学習加速も可能であることを示している。リング共振器クロスバーアレイでは、光入力として波長多重光を使用する。このため、光コム光源の活用も期待されている。本講演では、異種材料集積を用いたシリコン光回路に関する我々のこれまでの研究の取り組みを紹介すると共に、光演算における波長多重への期待について述べる。

5. 金沢大学 理工研究域 教授 砂田 哲

AI・機械学習の急速な進展により、コンピューティングの需要が爆発的に増大すると同時にその要求水準も劇的に変化している。一方で、現代のデジタルコンピューティング技術の進展は限界に近づいていると指摘されており、急増する計算需要に対応するため、次の時代を見据えた革新的な演算技術が求められている。その候補の1つとして、光を用いて超高速・低消費電力の並列AI演算を可能とする光コンピューティング技術が注目を集めている。本講演では、最近の光AIコンピューティング技術の動向を紹介するとともに、光多重化により光演算の並列化やマルチタスキング等のユニークな性質が可能となることを述べる。また、光コンピューティング研究で培われた技術と光センシング技術との融合により、新たな機能を創出する可能性があることを議論する。