OPIE2026にてセミナを開催します
2025年4月23日(木) 午後1時より、パシフィコ横浜の OPIE2026会場内 で、集積コムによる通信コンソーシアムがセミナ < 光コム x センシング 〜「測る」を変える光周波数コムの可能性 〜 > を開催します。
光コム x センシング の分野で最先端の研究を続けている研究者に講演いただきますので、ぜひご来聴ください。
光コム x センシング
〜 「測る」を変える光周波数コムの可能性 〜
光周波数コムの産業応用とデュアルコム分光法による磁性材料評価装置の開発
ネオアーク株式会社 代表取締役社長 波多野 智
光周波数コムは、これまで標準技術や精密計測といった先端研究開発の分野で主に利用され、その卓越した周波数安定性と精密なスペクトル制御能力によって多くの成果を支えてきた。しかし近年では、研究用途にとどまらず産業応用へと展開する動きが急速に進んでいる。本講演では、弊社における光周波数コムの納入実績を踏まえ、どのような産業分野で需要が高まり、実用化に向けてどのような技術的要件が求められているのかを整理し、今後の展望について考察する。
さらに、光周波数コムを活用した計測技術の具体例として、磁気光学効果を利用した計測にデュアルコム分光法を応用した磁性材料評価装置を紹介する。デュアルコム分光法は、高精度な広帯域スペクトル計測を可能にするだけでなく、光周波数帯において電場波形を直接観察できるという特徴を備えており、従来の手法では困難であった多様な材料特性の解析を可能にする。磁気光学効果は古くから材料評価の基礎手法として広く用いられてきたが、近年はより精密な分光情報が求められている。従来法では広帯域と高い波長分解能を同時に満たす測定に長時間を要する課題があったが、デュアルコム分光法の導入により高速かつ高精度な計測が実現し、新たな視点から材料を評価する可能性が開かれた。
光周波数コム×分子分光が拓く非接触温度計測
産業技術総合研究所 総括研究主幹 清水 祐公子

本講演では、ボルツマン定数に基づく新しい熱力学温度の定義(2019年改定)に直接トレーサブルな、デュアル光周波数コム分光法による非接触・高精度気体温度計測について紹介する。従来の温度計はITS‑90に基づく校正が不可欠であり、特に高温域では絶対精度に課題があった。一方、分子のエネルギー準位分布がボルツマン分布に従うことを利用すれば、分子の吸収スペクトルから熱力学温度を直接求めることができる。本研究では、アセチレン分子の振動回転遷移を対象とし、回転状態の分布を解析するRDT(Rotational‑state Distribution Thermometry)法 を採用した。
デュアルコム分光法は、わずかに繰り返し周波数の異なる2台の光コムを干渉させ、光周波数領域の吸収情報をRF領域にダウンコンバートして高速・高分解能で取得する技術である。これにより、広帯域に存在する多数の吸収線を同一条件で同時に観測でき、量子力学モデルに基づく一括フィッティングにより温度を高精度に決定できる。
実験では、1.5 µm帯光コムを用いてアセチレンの多数の吸収線を取得し、RDT法により求めた温度は白金抵抗温度計の値と良好に一致した。非接触・高速・校正不要という特長から、一次標準としての応用のみならず、現場計測やガス成分分析との同時測定など、多様な展開が期待される。
位相制御された光コムによる光演算を用いた瞬時3次元計測
電気通信大学 准教授 加藤 峰士
基本的な物理量である長さを知ることは学術・産業の基盤であり、中でも3次元形状の瞬時計測には高い需要がある。近年急速に成長する産業技術での要求仕様を満たし、高度化する科学技術において様々な現象の解明のためには、高速・高精度・広範囲計測を両立した形状計測手法が求められており、計測手法そのものの革新が必要となる。そこで我々は、従来手法では未踏の領域である広ダイナミックレンジかつ瞬時計測を実現するため、光周波数コム(以下、光コム)による瞬時3次元計測手法 を開発した。
本手法は、チャープした超短パルスの時間(距離)と波長の対応関係から、光コムを光源とするチャープフリーパルスとチャープパルスのスペクトル干渉像の振幅と位相を2次元的に瞬時計測することで、対象物の高解像度な瞬時3次元形状計測が可能となる。この振幅・位相像は、光コムの高い制御性を利用した光演算手法(全光ヒルベルト変換法)により瞬時計測することができる。これは、全帯域で90°位相差を持つ超短パルス対を生成することで、2位相ロックインアンプと同じ原理で光の振幅と位相が画像として瞬時計測できる手法である。これにより、ダイナミックレンジ6桁、nmの不確かさ、fsの時間分解能を有する瞬時3次元形状計測を実現した。
光コムを用いたレーザー基準高安定マイクロ波発振器の開発
産業技術総合研究所 主任研究員 西山 明子

光格子時計をはじめとする光時計の高性能化により、秒の定義改定に向けた機運が国際的に高まっている。一方で、遠隔地間における高精度な時計比較や時刻配信、GNSS や VLBI に代表される基準・観測インフラへの応用などにおいては、今後も高い周波数安定度を有するマイクロ波発振器が不可欠である。これまで、こうした用途には水素メーザーが最も高安定なマイクロ波発振器として広く用いられてきたが、日本国内での商用供給はなく、世界的にも限られた数社のみが製造・販売を行っている。そのため近年では、水素メーザーの供給不足が顕在化し、時間周波数分野における国際的な課題となっている。
そこで本講演では、高安定レーザーを基準とし、光周波数コムを用いて光周波数をマイクロ波帯へ周波数変換することで実現される高安定マイクロ波発振器の構成と技術的背景について紹介する。光周波数コムは、光とマイクロ波を位相コヒーレントに結ぶ技術として、光時計をはじめとする精密計測分野においてすでに不可欠な基盤技術となっている。本講演では、高安定レーザーとして開発しているヨウ素安定化レーザーとその安定度評価を中心に、本技術を用いた将来のマイクロ波発振器および時間標準への応用可能性について議論する。
分布型光ファイバセンシングの原理と最前線
横浜国立大学 准教授 水野 洋輔
本講演では、分布型光ファイバセンシングの基礎から最新の研究動向までを体系的に概説する。まず、光時間領域反射計測(OTDR)、光周波数領域反射計測(OFDR)、および光相関領域反射計測(OCDR)といった代表的な分布計測手法について、それぞれの基本原理、測定原理の違い、ならびに適用分野を整理する。特に、空間分解能、測定レンジ、計測速度といった性能指標が各方式においてどのように決定され、どのようなトレードオフ関係にあるのかを、具体例を交えて解説する。OCDRに関しては、100 km級の測定レンジと約10 cmの空間分解能を同時に実現できる点を紹介するとともに、時間が許せば、その基本概念を自由空間計測へ拡張した相関領域LiDARへの展開についても触れたい。次に、ブリルアン散乱を用いた光相関領域反射計測(BOCDR)に焦点を当て、歪および温度の分布計測原理を概説する。さらに、リアルタイム動作、mmオーダの高空間分解能、ならびにプラスチック光ファイバを用いた柔軟構造物への応用など、近年の技術的進展と応用可能性について具体的な研究例を交えて紹介する。これらの分布型センシング技術の発展を踏まえ、光周波数コムを含む新しい光源技術との接点についても、今後の検討課題として考えていきたい。
光コムによる光-電気周波数変換型センシング 〜光で測り、電気で読み出す次世代計測原理〜
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所最高研究責任者・教授 安井 武史
光周波数コムは、等間隔な多数の周波数成分を有する光源であり、光周波数と電気周波数を位相コヒーレントに結ぶ「周波数リンク」として機能する。電気周波数標準から光周波数への周波数転送により、光コムは光周波数の高精度な“ものさし”として利用可能となり、光周波数計量標準の確立に大きく貢献した。この成果は、2015年ノーベル物理学賞にもつながっている。一方で、光周波数から電気周波数への逆方向の周波数転送も可能であり、いわゆる光/電気周波数ギアとして機能させることで、光周波数の不確かさを電気周波数信号へと転写し、超高安定な電気周波数信号を生成できる。
本講演では、この光/電気周波数ギアの概念をセンシングへ拡張し、光た微小な物理量変化を高感度にセンシングし、電気周波数(RF)信号として高精度に読み出す新しい計測原理を紹介する。特に、成熟したRF周波数計測技術(計測機器、周波数標準、アンプなど)を活用できる利点に着目し、屈折率センシングおよびバイオセンシングへの応用例を通じて、その有効性と将来展望を議論する。
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